06 11月

「安藤誠 講演会」が開催されました

2020年11月5日(木)19時より、町田市文化交流センターにて「安藤誠 講演会 日常の奇跡」が開催されました。

本講演会は、世界的フォトコンテスト Wildlife photographer of the year 56 (2020) の受賞を受けて、受賞記念として企画したものですが、それに合わせて、季刊『道』インタビューに収めきれなかったエピソードをすべて入れた、安藤さん自伝エッセイの出版を企画。さらに、Nature's Best Photography Asia 2020 の受賞が続き、3つの嬉しい出来事を記念する講演会となりました。
当日はおよそ60人が来場、安藤さんのプロネイチャーガイド、プロカメラマンとしての実践に基づく講演に耳を傾けました。


 

 

安藤さんの2人の弟子、山田佳奈さんと小川浩司さんによる前座では、弟子として師匠の安藤さんに学ぶ思いの詰まった山田さんのプロモーションビデオと、白鳥をモチーフにした優美にしてユーモラスな小川さんの動画が放映されました。

安藤さんの講演は、コロナという今ならではの話題から始まりました。
コロナ感染をまったく気にせず「自由」をかざして生きるのも、徹底的に排除しコロナを怖れて生きるのも、どちらもその先は滅亡しかないこと。すべてはバランスで、感染防止の観点を持ちつつ生活を楽しむこと、相手への配慮、気持ちのよいコミュニケーション。そういった心掛けで、コロナとともに生きる術(すべ)が語られました。

次に Nature's Best Photography Asia 2020 の受賞作品の動画が放映されました。音楽も重要な要素であるという安藤さんの言葉通り、北海道の野生動物たちのいのちの躍動と音楽がピタリと一致し、3分という時間の中に、安藤さんの思いがぎゅっとつめられています。(【こちら】でご覧いただけます)
さらにそれを、1シーンずつ追いながら、その意味や背景、撮影秘話、動物たちの気持ちまでが解説され、会場からは感嘆の声が起きました。

なかでも、昨今の日本のクマたちが置かれた状況――見つけ次第、捕まえ次第射殺という現状に対し、マスコミ報道のあり方への疑問、怒りが語られました。
テレビで流される、市街地に入り込んだクマの気持ち。安藤さんのお話からは、私たちと何ら変わらない喜怒哀楽を持ち懸命に生きるクマの姿が浮かびあがり、毎年5,000頭ものクマが殺されていることの理不尽さが一気に迫ってきます。

すでに日本で絶滅してしまったオオカミの例を挙げ、なぜ、どのように絶滅に追い込まれたかが詳しく解説され、クマについても同じような過ちを繰り返すのかと、厳しい問いかけがありました。

そしてそのクマたちを守るために、狩猟免許を持つ覚悟をしたこと。狩猟ができることで、自分の責任においてクマを追い払い、捕まえ、しかるべきところに放すなど、むやみに殺すことのない関わり方ができることを、熱を込めて語られました。

プロガイドとして、野生動物を相手に顧客の希望を必ずかなえるための心構えやテクニック
40年ぶりの自転車旅と親友への感謝、物に魂を込めること
「北海道」という名前に込められた意味、土地への愛着、尊敬について
上梓した自伝エッセイ『日常の奇跡』に込めた思い

笑いあり、涙あり、気づきと学びがいっぱいの講演はあっという間に終演時間を迎え、最後に、安藤さんの動画作品「Ordinary miracle」が放映されました。
厳しい自然の中でいのちを輝かせる動物たちの姿と音楽。「何気ない日常こそ、宝物であり奇跡である」というメッセージが、会場いっぱいに広がっていきました。

講演終了後、多くの人が新刊『日常の奇跡』を手にして、安藤さんのサインをいただいていました。

参加者の感想を、ほんの一部ですが紹介します。

<参加者の感想>

●東京 自営業 33歳 MT
自然、動物に対するリスペクト、そして撮影に対する姿勢に刺激をいただきました。また話の中にユーモアがあり、非常に楽しい時間となりました。

●東京 主婦 77歳 NS
動物に対する愛情が深くてやさしくて男らしくて安藤さんは素晴らしいお方です。熊のことがこんなにやさしい動物とは知りませんでした。

●東京 自営業 58歳 UK
美しい映像、軽快でありながら真実に迫ったトークに感動しました。『道』の連載で、「よくこんな瞬間をとらえるものだ」と写真を見ながらいつも感心しておりましたが、お話を伺って、なるほど、と納得するばかりでした。

お父様のお話もぐっとくるものがありました。
熊についての認識が180度変わりました。今までいかにマスコミに騙されていたか。家族にも今日のお話を伝えたいと思います。そしていつか冬に北海道で安藤さんのガイドを受けたいです。

●神奈川 看護師 YK
熊さんたちを含む野生動物たちについて間違った情報が流れている事には前々から憤りを感じていました。日本中に正しい熊さんの生態を広げなければならないと改めて思いました。野生動物を絶滅させることは、人間のことも追い詰めると言うことをもっと大勢の人達に知ってもらいたいです。

●神奈川 心理師 55歳 KL
本当に面白かったです。この純粋さを変わることなく持ち続けている生き方があることに心から感動します。熊の話には暗澹たる思いになりました。本当に彼らに申し訳ない。安藤さんの写真や動画が訴える力を持っているのは、それがただ美しいからではなく、そこに写る生き物たちの日常に安藤さんが心を寄せ、彼らと心を通わせているからだと思いました。

●神奈川
ユーモアも交えてとても力強く自然の動物のすばらしさを語ってくださいました。素晴らしかったです。企画してくださって感謝です。

●神奈川 主婦 40歳 S
美しい自然にとても感動しました。知らなかった真実を知れてよかったです。ありがとうございました。

●神奈川 50代 男性 RK
講演会、とても楽しく参加させて頂きました。写真の美しさに驚きました。
動物の生き生きとした姿に引き込まれました。フクロウやクマの事を「この子達」とか「この人たち」と安藤さんが言うのが違和感が無くて面白いな・・・と感じました。

ツアーガイドというビジネスの視点も入っているので自然との距離感というか、バランス感覚が良くて聞いていてスッキリと話に入っていけました。

CO2の問題、海水のマイクロプラスチックの問題、放射能汚染。全てが絶滅の方向に向かっているのにコロナで産業のスピードが抑えられてよい方向へ向かっていることなど、納得のお話でした。あっという間の2時間でしたが、良い雰囲気で楽しかったです。

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