季刊 『道』 No.155 2008年冬号 (\1,200) [購入する] [読者の声]
やりきる心
やりきる人には、言い訳がありません。
「やりきる」がその人の自信となる。その自信が次の「やりきる」へ、次の「やりきる」へとつながるのです。
[対談] 人間、一人では生きられない 「生き抜いた命」
―― 覚悟して生きる力
小野田自然塾理事長・元陸軍少尉 小野田寛郎
VS UK実践塾代表 宇城憲治
結局、自分に負けては駄目なんですね。もう処置なしと言ったら負けなんです。
「まだやる手がある」と思っているうちは、負けていないんですね。(小野田)
その道に命を懸けた人の生きた言葉、思い、そして、身体を通して語られる
小野田さんのお話はこのままじゃあかん、なんとかしなくてはならんという
エネルギーが湧いてきます。(宇城)
第二次大戦時、フィリピンのルバング島で戦後も3人の戦友と共に戦い抜いた小野田寛郎氏。
次々と戦友たちが倒れていくなかで30年間も戦士としての任務を続行した、そのゆるがない心の原動力は何か――生い立ち、母親のこと、日本の現状への怒り、そして若者の教育について、具体的な戦場での体験等々、宇城師範ならではの奥深い視点でお話が引き出されていきました。
とくに〝生来の負けん気と誇りで30年を生きた〟果てに語られた、氏の「人間は一人では生きられません」は、深い意味を私たちに与えてくれます。
おのだ ひろお
大正11年、和歌山県生まれ。ルバング島では遊撃指揮・残置諜者の任務を遂行、以来30年間、任務解除命令を受けられぬまま戦闘を続行した。昭和49年日本に帰還。翌年春、ブラジルに渡り、牧場を開拓。青少年育成を目的に「小野田自然塾」を開く。自然塾での活動とともに、日本各地で多くの講演活動を行なっている。
[会見] 「生きる」尊さへの気づきが、武道を命と結びつける
剣道範士八段 井上義彦
人間が死ぬ惨めさ、それがクーッと心に突き刺さっている。
戦争のむなしさを理屈抜きに身体で知った。
それが私の戦後の剣道の中心にすわっているのです。
井上義彦範士は、長きにわたる剣道修行はもとより、戦中、海軍飛行予科練での体験と、長年勤められた拘置所刑務官としての経験があります。そのまさに命の尊さを身体に刻む経験は、その後の先生の剣道人生と生き方の大きな転機となりました。
「現在の武道は命のやりとりではないでしょう。武道は、命に直接結びつかねば、本当に世の中に必要なものにはなれません」
ぎりぎりの命を体験したからこその先生の武道に対する思い――それは、現代日本武道への厳しい眼差しそのものであり、また、一方で、先生の剣道への深い愛情につながるものでもありました。
いのうえ よしひこ
昭和3年、兵庫県生まれ。剣道範士。神戸市立第一神南商業学校時代に松本敏夫範士九段および喜多川義晃範士の指導を受ける。西善延範士九段の門下生。現在、静岡県警察名誉師範、静岡県剣道連盟顧問相談役、知恩剣修館館長、焼津市剣道連盟最高顧問、全日本剣道連盟審議員、駿遠三菱自動車販売株式会社取締役。
[会見] 伝えたい、日本人の誇りと感性
合気道八段 田村信喜(フランス在住)
今は、フランスのほうが日本の道場よりきちっとしています。彼らには、
「求めている人の姿」がある。何を求めているか、それが道場での態度に出るのではないでしょうか。
合気道開祖 植芝盛平翁のもとで11年間、内弟子として修行された田村信喜師範は、開祖の記録映画や資料写真にもっとも多く登場する弟子のお一人です。
1964年からは合気道普及のために渡仏、以来43年、ヨーロッパ諸国の指導にあたられてきました。今夏、来日された田村師範に、内弟子時代のご苦労と、フランスから見た今の日本についてお話を伺いました。
たむら のぶよし
昭和8年、大阪生まれ。合気道八段。合気会本部で内弟子として修行。植芝盛平の資料映画では受身として多く登場している。(昭和39)年フランス・マルセイユに発つ。現在はフランスの合気道組織FFAB*(Federation Francaise d’Aikido et Budo)の中心的人物。
■ 生き抜くための稽古 特別編(第5回) スープに込める“あなたのために”の思い
[対談] 料理家 辰巳芳子 VS 医師 北村龍彦
(名古屋文理大学短期大学部 介護セミナーにて)
終末医療は、身体の救いだけでなく、心の救いがなければなりません。(辰巳)
「あなたのために」という思いが入っているかどうかは、
成分分析表では出ないんです。(北村)
命のスープを病院へ――子供たちのための大豆100粒運動とともに料理家の辰巳先生がすすめられているのが、病を得た人が耐え忍ぶ力を与える命のスープの活動です。
以下は、去る11月24日、主に介護関係者を対象に行なわれた介護福祉セミナー『終末期を支える』(名古屋文理大学短期大学部主催)における、辰巳先生と北村龍彦氏(辰巳先生のスープを病院で実際に導入した近森病院副院長)との対談模様です。
「科学的分析による数値には決してあらわれない、辰巳先生のスープの力について、またそのスープが家族や介護者の心を支え、力を与える」ということが、じっくりと語られていきました。
■ 600年の努力が残す「苧麻(からむし)」の伝統
高級和服布地の原料・苧麻を守り育てる 五十嵐善良氏、羽染桂子氏に聞く
取材 梅津國蔵(UK実践塾)
苧麻はやっぱり昭和村の財産です。昭和村の土があう。
他の土地では土や気候があわないのか、うまく育たない。(五十嵐)
福島県昭和村。
雪深い会津地方の山々に囲まれた人口約1700人の小村で、本州では最後となった高級和服布地の原料・苧麻の栽培が、600年の伝統を守り、受け継がれています。
そこには自然と共に生き、自然の良さを最大限に引き出した、日本古来の伝統を見ることができます。
昭和村大芦において、苧麻の畑を守り生産を続けて来られた五十嵐善良さんと五十嵐さんから苧麻作りの指導を受けている羽染桂子さんに、苧麻栽培への思いと伝統を残す取り組みについてお話をうかがいました。
【連 載】
■宇城流根本原理 ― 気づく、気づかせる
UK実践塾代表 宇城憲治
「武術に見る根源的な力(エネルギー)」
■薬物依存症――子供たちと共に生きる
茨城ダルク代表 岩井喜代仁
「予防の原点は、親が変わることだ」
■失われた日本人の美徳
合気道九段・満州建国大学経済学部卒 奥村繁信
「みそぎの力、合一の力を持つ水」
■あくなき向上心に学ぶ
なぎなた範士 澤田花江
「体で覚えなくては『覚えた』にならない」
■伝承のともしび
合氣道スクールズオブ植芝主宰 アメリカフロリダ在住 五月女貢
「日本的思考様式について――日本人の『あいまいさ』が意味するものとは」
・木暮浩明 「うつくし、日本」 日本武道の危機!!
・佐々木望鳳馨 「先哲の教え」 心学の祖・石田梅岩
・井上強一「基本を守る」 運命、宿命
・佐々木の将人 「なるほど」 80年の流れ――大道商人から大道説法へ
・野中日文 「思想としての剣」 「間合い」と「位どり」――通念や常識を疑え
・森 恕 「琢磨会と大東流」 合気の道
・黒田鉄山 「伝書に守られて」 手――ゆっくり動いても消える
・ピーター・ゴールズベリ 「日本文化を鏡に映せば…」 死と道徳概念からどらえた「生」
・20代の視点 (リレー連載・村田憲一郎) 逆境を乗り越える――サンマルコ食品(㈱)代表取締役社長 藤井幸一氏に聞く
【News トピックス】
ニュージーランドに合気道を紹介して40年 リンチ夫妻の思い
商品情報: dou155, A4判 84頁