[会見]カリフォルニア合気道ウエスト道場 フランク・ドーラン 合気会7段
「合気道で育む人間関係は盛平翁の偉大な遺産」
◆形よりもいかに原理を表現するか
――指導される時、どういうところを強調されますか?
ドーラン 形というよりも合気道の原理ですね。前にも言いましたけど、この原理を表現するのにそれぞれが形をもっていると考えるからです。 たとえば、今日のエキスポセミナーでは三つの原理を強調しています。つまり、合気(合わせ)、崩し、姿勢です。稽古をしていて不具合が起こった時、この三つの原理を思い返してみます。するとたいてい、このうちの一つが欠けています。姿勢が悪かったり、相手のバランスを崩していなかったり、気を合わせていなかったり。この三つがそろってこそ合気道は上達するのです。これは私の指導法の一つですけど。
私は精神性は重視しますが、大先生も合気道は宗教ではないとおっしゃったように、私も合気道を宗教ととらえてはいません。合気道の理念を一言で言えば、“人間性の追究”だと思うのです。特にこの年齢になって合気道から得られる悦びと言うと、人との交わりですね。長年かけて培ってきた友情をとても大切に思っています。
◆合気道がもたらす“交流”
――ドーラン先生がみなさんと交流される様子は、まさに“合気”を感じさせますね。
ドーラン “日常即合気道”ということを私は考えているのです。私たちは日常の生活で人と衝突しては、それを解決しようとしますね。でも合気道をやっていると自然に上司や恋人や友人に、おだやかな態度をとれるようになるんです。自然に道場でやっている方法を生活の中に生かすようになるんです。これは大先生の偉大な遺産だと思います。
養神館の塩田剛三先生が、「70歳になったら、合気道が楽しくなるよ」と言われたそうですが、私も今年の11月で70歳になりますから、合気道を本当に愛していますし、これからも楽しんでいこうと思います。 年がたつにつれて合気道稽古の目的が変わってくるのは自然のことです。若い時は強くなりたい、実際に自分の合気道が効くかどうかを確かめたいと思う。しかし40年も合気道をやっていると、「合気道が護身に役立つか」というようなことよりも、合気道での人間関係が重要な意味をもってくるのです。
――ドーランさんの合気道は、生徒さんたちが成長するのにとても役立っているのですね。
ドーラン そう望んでいます。しかし合気道によって彼等が成長すると同時に、私も彼等によって成長しているのですよ。若い彼等が稽古をしているのを見ていて感激して泣きそうになる時もあります。みんな本当に素晴らしいし真面目です。生徒達が可愛いという気持ちで一杯になる今日このごろです。
――ありがとうございました。