210号 (2021秋)


テーマ 「先を見る生き方」

今の中に未来がある。

今に居付かず、先を見渡すことで今が広がり、
その先に自分の辿り着きたい未来がある。

先を見据えるからこそ
今、やるべきことが見えてくる。

立ち現れる困難も課題も、
ひるまずに進むことができる。

そんなしなやかな生き方がつまった一冊になりました。

 

2021年10月21日発売

購入する

読者の声

  巻頭対談

個性を手放し、その先の領域へ
― 見えないエネルギーを見える形に ―

書家/芸術家 紫  舟

VS UK実践塾代表 宇城 憲治

 

道210号 紫舟・宇城憲治 道210号 紫舟・宇城憲治 道210号 紫舟・宇城憲治

書を飾るだけで、
その言葉の恩恵があふれ出たり、
人生を導いたり、人を癒したり。
そのようなエネルギーが宿る作品を
作りたい。

日本の伝統的な書を、紙だけではなく彫刻やデジタルなど、様々な形のアートとして昇華させ世界に発信している紫舟さん。受賞歴も多数で、なかでも2014年のフランス国民美術協会展では「北斎は立体を平面に、紫舟は平面を立体にした」と称され、日本人初の金賞をダブル受賞し、翌年同展の「主賓招待アーティスト」に選出されたことは日本人では横山大観以来の快挙だという。

その紫舟さんは今、「個性を捨てる」ことで、自らの限界を超える境地を目指している。気によって人間の生まれながらの潜在力に気づかせ開花させる指導を行なう宇城氏との対談は、紫舟さんに自らの身体や作品にあるエネルギーを体感してもらうことで、制作を次のステップへ導く存在とは何か、その目に見えない内なる原動力を模索していくという臨場感あふれるものとなった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゆっくりで速い 内面のスピード

宇城 事前に紫舟さんの資料を読ませていただいて、共感するところが多々あり、今日のテーマを私なりにまとめてきました。
資料に「自分の中にすでに準備されているものとつながり、インスピレーションになることがある」と書かれていますが、それよく分かります。ふつうは1+1が2になりますが、それが3にも4にも5にもなるそういう出会いがある。
またこうも言われている。「最近では、発想力やインスピレーション以上に、制作を次のステップへと導いてくれる存在があることに気づくことができた」と。これは武道の言葉ですが、「身体は内なる気に応じて動き、気は心の向かう所に応ずる」。まさに紫舟さんの場合、これだと思います。内から勝手に出てくる。内から出てくるということは、持論ですが、「非可逆的ステップアップ」が起きようとしているのだと思うのですね。
もう一つ共感したのは、「筆で、普段よりも10倍の遅さでゆっくりと『左はらい』を書き……」というところ。
「10倍の遅さで書く」ということは、内面が高速度状態になっているということですね。だから高速度撮影したものはスローモーションに見える。外面はゆっくり書いていても、内面はもの凄い速さになっているということです。

紫舟 宇城さんが武道をする時には、相手はスローモーションに見えるのでしょうか?

宇城 見えますね。見えるから相手のいかなる攻撃パターンであっても入っていくことができるんです。それは「先」を取っているからなんですね。つまり相手の打とうとするその気を止めるから、相手は手が出せない。だからスローモーションに見える。というよりストップモーションですかね。

紫舟 それは、非常に高い集中状態ということでしょうか。

宇城 そうかもしれません。相手を包み込むという感じですかね。サーフィンで言えば、私はボードではなく波。世界チャンピオンクラスがかかってきても触れることができないとよく言われます。当然、突きも当たらない。稽古ではより真剣さを求めて、素手でなく相手にメリケンサック(鉄製武器)を着けさせたり、木刀でかからせたりなどしています。
そういうことが可能なのは、理屈的に言えば先ほどの高速度撮影の状態になっているということです。バンジージャンプで飛び降りた人に何秒くらいだったかを聞くと、たいてい5秒くらいと答えるのですが、実は1~2秒なんですね。人間は危機的状況に置かれるとその危機に対応するために脳が高速度撮影状態となり、実際よりも滞空時間がはるかに長く感じる。それだけ観察能力も上がるということですね。

紫舟 ですから宇城さんは相手をゆっくり避け、さらに技をかけることができるのですね。私も、そのようなスローモーションに世界が見え、筆を持てる境地に達したいと願っています。
子供の頃に、お習字のお稽古で書を書いている時に、私が手を動かそうと思っているのとは違う方向に手が勝手に動いてしまっているような感覚を体験をしました。宇城さんが、すべてがスローモーションに見えているというのが分かります。まだ至っているレベルではありませんが、強くあこがれている境地です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

道210号 紫舟・宇城憲治

 

<<< クリックで拡大

 

●プロフィール

◎ ししゅう
書家/芸術家
大阪芸術大学教授
日本の伝統文化である「書」を、絵、彫刻、メディアアートへと昇華させ、文字に内包される感情や理を引き出す。その作品は唯一無二の現代アートとなり、日本の思想や文化を世界に発信。
フランス・ルーヴル美術館地下会場でのフランス国民美術協会展にて、書画で「金賞」、彫刻で「最高位金賞」を日本人初のダブル受賞。(2014年)
イタリア・ミラノ国際博覧会にて日本館のエントランス展示を手掛け、展示デザイン部門で「金賞」を受賞。
フランス・ルーヴル美術館地下会場でのフランス国民美術協会展にて「主賓招待アーティスト」に選出され大規模展を開催。日本人では横山大観以来の快挙となる。(2015年)
天皇皇后両陛下(現、上皇上皇后両陛下)が『紫舟』展に行幸啓され、紫舟自ら作品をご案内。(2017年)
代表作に、NHK大河ドラマ『龍馬伝』、美術番組『美の壺』、伊勢神宮『祝御遷宮』内閣官房『JAPAN』 、資生堂グローバル展開のパッケージなど、多数。

 

◎ うしろ けんじ
1949年、宮崎県生まれ。
エレクトロニクス分野の技術者、経営者として活躍する一方で武道修行を積み、文武両道の生き様と、武術の究極「気」による指導で、人々に潜在能力を気づかせる活動を展開中。「気」によって体験する不可能が可能となる体験は、目に見えないものを信じられない人にも気づきを与えるとともに、人間本来の自信と謙虚さを取り戻すきっかけとなっている。
空手塾、道塾、教師塾、野球塾、企業・学校講演などで「気づく・気づかせる」指導を展開中。
㈱UK実践塾 代表取締役
創心館空手道 範士九段
全剣連居合道 教士七段
宇城塾総本部道場 創心館館長

  ロングインタビュー

出会いと発見の旅
ドキュメンタリー映画にかける思い

映画監督 吉岡 敏朗

 

道210号 吉岡敏朗 道210号 吉岡敏朗 道210号 吉岡敏朗

大地のエネルギーが身体に染み込んでいる人というのは
すごいと思うし、本当に尊敬します。
国宝にならずとも、表彰されずとも
ずっと地道にやってきた人の素晴らしさ
私の描きたいのはそっちなのです。

映画やテレビ、またビデオ作品の監督など、40年以上にわたって、様々なジャンルの映像制作にたずさわってきた吉岡敏朗監督。手がけた作品は300以上、受賞歴も多数だ。ここ最近は、自然の摂理や昔ながらの暮らしをテーマにしたドキュメンタリー制作に力を入れている。その原点は、子供時代、松江の自宅前に広がる宍道湖の鮮やかな夕陽や打ち寄せる波の音だった。
映画に込める監督の思いを聞いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

封印された人や物ごとを撮るのが自分の仕事

吉岡 タイでの撮影の時、綿の栽培は撮影できたのですが、大麻は撮影できませんでした。当時タイでは麻が一部限られた地域でしか栽培されていなかったからで、中国から麻糸を輸入していました。うさぶろうさんは「自分の見えるところで作られた麻で服を作りたい」という希望をお持ちでした。
 そういうことがあったあとに日本で『つ・む・ぐ』を上映していると、うさぶろうさんが日本に帰ってきて「北海道で麻の栽培が大規模に始まるかもしれないよ」と言うのです。それまでも各地で麻は栽培されていましたが、伝統的なものばかりで、また当時北海道でも栽培免許を持っている人はいましたが、大々的な栽培ではありませんでした。
 伝統に加え、これからの衣食住に役立つ大麻の栽培。そんな北海道での大麻農業が実際に動き出し、2014年から実際の種蒔きや、どんどん伸びる麻を撮影したりしました。そういうなかで麻についていろいろ話を聞くうちに、大麻というのは古くは土器の縄目にも使われ、古来より神社や生活資源として私たちの暮らしを支えてきた素晴らしい植物だということを知るようになります。それなのに現在では封印されている植物だということも。
 それで映画を通してその封印を解く旅が始まります。大麻が70数年前までは日本で普通に植えていた植物であることを知っている世代はだんだん高齢化して亡くなっていく。生の証言を撮影するのは今しかないと、各地の大麻の畑を廻ったり、糸を績む人や大麻に関連する祭事などを撮影するうちに完成したのが、『麻てらす ~よりひめ 岩戸開き物語~』という映画です。

―― 映画では70年ぶりに麻を績む96歳のおばあさんが登場されましたね。

吉岡 あのおばあちゃんは、現在は101歳で、今もお元気ですよ。大地のエネルギーが身体に染み込んでいる人というのはすごいなと思うし、本当に尊敬します。人間国宝という方がいらっしゃるけれど、国宝にならずとも表彰されずとも、ずっと地道にやってきた人の素晴らしさ、私の描きたいのはそっちなのです。
 そして私の役目というのは、今は水面下にいるかもしれないが、将来的には本流になるというか、もともと本流だったけれど封印されていた人やものごとを撮って表に出す努力をすることだと思うのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

道210号 吉岡敏朗

 

<<< クリックで拡大

 

●プロフィール

◎ よしおか としろう
映画監督。1956年、島根県松江市に生まれる。日本大学芸術学部映画学科卒。テレビ、ドキュメンタリ―、PRビデオなど、様々なジャンルの映画・映像を制作、作品本数は300を超える。カルロビバリ映画祭優秀賞、カナダ国際映画祭優秀賞、リッチモンド国際映画祭佳作など、受賞歴多数。現在は自然の哲理を原点としたドキュメンタリーの自主制作に力を入れている。

  ロングインタビュー

水と土と山の力を保育の土台に
人の力を最大限発揮できる社会を目指す

くわなひまわり保育園園長 近藤 直樹

 

道210号 近藤直樹 道210号 近藤直樹  道210号 近藤直樹

自分の能力が「使えた」時は幸せじゃないですか。
できることが増えることは自分の可能性が開けて
力を最大限発揮できることであり、すごい喜びだと思う。
私はできる、できないで判断しているわけではなく、
できるようになる力があるのだから、
そこを伸ばしてあげることが
大事でしょうということなんです。

1歳児から4歳児の山の保育園に同行させてもらった。1歳児は這って斜面を登り、2歳児は虫や花や草と遊びながら登っていく、4歳児は文字通り山の斜面をかけめぐる。

自然の中で土に根差した保育を展開する近藤直樹園長は、高校教師時代、生徒に厳しく指導するなかで、学校や家庭の課題に気づき、教育とは何かを深く追究するようになったという。

もっと早い段階で教育に関わりたい――その思いから保育園を14年前に立ち上げた。土と地域に根差した保育園を全国に広げることで、人の力が最大限に発揮できる社会の実現をめざしたいと語る近藤園長に、保育への思いを聞いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

水と土と山の力を保育の土台に

―― 子どもたちは山での保育の中でどんな変化があったでしょうか。

近藤 初年度から姿は変わるのですが、やはり積み重ねたものが見えてきています。歩き始めが1歳児で、2歳児だと歩いたり走ったりまあまあしますが、昨年2歳児は、3月に山の8合目まで行き、今年の2歳児は、この時期(9月)ですでに頂上まで行っている。半年くらい早い。みんなぜんぜん疲れていない。普通は降りる時に、遊び過ぎるとぐずぐずになるので遊びを手加減するのですが、そのぐずぐずがない。これはやはり、ゼロ歳児からの積み重ねなんですよ。
 ゼロ歳の時にどう過ごしたかがずっと影響を与えるのです。自然の中に出ていく保育がちょうど4年目で、私もやりたいことができ始めて2年目くらい。今のゼロ歳児が育った時に、本当に理想の保育ができているのではないかと思います。

―― 泥の上でハイハイして遊んでいるゼロ歳児や、山を這って登る1歳児は、きっとぜんぜん違うように育つと思いました。

近藤 これは考え方的に言うといろんな説があるのですが、脳の体性感覚野が1歳半である程度完成するという話があって、私は1歳半はひとつの大きな節目、いろいろなことを乗り越えていくタイミングの年齢、つまり自我が芽生えるまでの積み重ねの時期だと思っています。肌感覚と体性感覚野は繋がっているんですね。体性感覚野で多くの場所をとっているのは手と口。それが完成する時期に最も豊かな経験をさせてあげられるとしたら、水と土だな、ということなのです。
 土に対する考え方があって、私たちは土の栄養を野菜を介して摂っている。ヒマワリの種をその辺に置いても芽は出ませんが、土の中に入れて、そこに雨が降り太陽が照れば芽が出る。ここに何があるんだという。ここに生命エネルギーがあるはずで、それを触っていく、それを乳児の頃の感覚が育つ時に十分に経験することが最高の育て方になるだろうという考えです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

道210号 近藤直樹

 

<<< クリックで拡大

 

●プロフィール

◎ こんどう なおき
1972年生まれ。俳優の道をめざすも29歳で事務所を退所。その後高校教師となり、生活指導部として指導にあたるが、日本の教育問題、家庭の問題に気づき、教員をやめて保育園を設立。脳科学、身体発達、心の発達の三つの側面から学びを始め、「一生幸せに過ごす親子を育てる」という理念で保育園を立ち上げ、今年で14年目を迎える。現在3つの園を運営する。

  連 載

道210号 工藤清敏

【新連載】
◆健康回復学研究所所長 工藤清敏
連載『塩から社会を見てみれば』

「私たちの身体は海である」

怪我と病気をきっかけに、ミネラルバランスにすぐれた塩を摂る大切さを知り実践してきた工藤清敏さん。長年にわたる塩の研究と実績を土台に、自然治癒力の要が塩にあることを全国に伝え歩いている。
減塩が当たり前になっている今、人と塩の関係から見えてくる、さまざまな社会の矛盾や課題を見つめていきます。

◎ くどう きよとし
精神免疫学をページ・ベイリー博士に学び、心と体に最も優しい治療法を探求。生き方、考え方、言葉と塩と植物で生活習慣病が回復していくことを伝えている。

道210号 前島由美

◆ゆめの森こども園代表 前島由美
連載『愛の関わりと連携で、輝きを取り戻す子どもたち』

「お母さんの心の安定を図り、子どもが安心できる家庭をつくる」

療育支援施設「ゆめの森こども園」で、生き辛さを抱えている子どもたちに向き合う前島由美さん。愛情いっぱいの関わりと、親御さんや学校・地域と丁寧に連携によって本来の輝きを取り戻していく子どもたちの実例を紹介していきます。
今回は、子どもの悩みを解消するために行なった、お母さんへの関わりを紹介。

◎ まえじま ゆみ
療育支援施設ゆめの森こども園を開き「発達障害」とされる子どもたちをサポート。子どもの食環境改革を目指す。

道210号 安藤誠

 

◆写真家・ネイチャーガイド 安藤誠
連載『日常の奇跡』

「双頭」

ネイチャーガイドとして自然と向き合う安藤氏。
目に見えないものを見、声なき声を聞くプロフェッショナルとして、私たちが見過ごしている「日常の奇跡」を、一瞬を切り取った写真とともに届けます。

◎ あんどう まこと
写真家/ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウィンドオーナー&ガイド
北海道アウトドアマスターガイド。

道210号 船橋康貴

 

◆一般社団法人ハニーファーム代表 船橋康貴
連載『ミツバチが教えてくれること』

「自然の叡智に学び、ゆだねる生き方」

ミツバチ絶滅の危機は人類滅亡の危機
私たちが生きていくための環境維持に欠かせないミツバチの存在を伝え、守ろうと東奔西走する船橋氏。
その活動の「今」を伝える。

◎ ふなはし やすき
養蜂家・環境活動家。
世界中で激減しているミツバチを守るために、環境のプロとして、ミツバチを使った「ハチ育」や町おこしなどを行なっている。

道210号 佐々木隆

 

◆銀河浴写真家 佐々木隆
連載『私たちは銀河のなかに生きている』

「銀河鉄道と宮沢賢治」

生かされていることに気づけば、人生はもっと豊かになる。
銀河を舞台に生命の息吹を写しとる、佐々木隆氏の銀河浴写真。

◎ ささき たかし
銀河浴写真家。銀河と地球を一体化させた写真で新聞掲載多数、数々の賞を受賞。元公立高校教諭。

 

◆写真家 野村哲也
連載『地球を歩く ~知られざる絶景を求めて~』

「初めての入院生活」

世界に飛び出し旅するからこそ見える、日本のこと、自分自身のこと。
秘境と絶景を求めて 150ヵ国以上を旅してきた写真家 野村哲也氏の連載。

◎ のむら てつや
写真家/高校時代から山岳地帯や野生動物を撮り始め、〝地球の息吹き〟をテーマに、アラスカ、アンデス、南極などの辺境地に被写体を求める。渡航先は150ヵ国以上で著書は14作。

 

◆作家 山元加津子
連載『ありのままの私たち』

「みんな、大切な命」

人と違っていても、障がいがあっても、人はみな素晴らしい力を持っている。
植物も動物も人間も、みんなでひとつの命を一緒に生きている――。
長く特別支援学校で子供たちと接してきた山元加津子さんが伝える、生きる上で大切なこと。

◎ やまもと かつこ
長年、特別支援学校の教員を務める。作家。植物状態と思われる人も回復する方法があり、思いを伝える方法があることを広める「白雪姫プロジェクト」を推進中。

道210号 金澤泰子

 

◆書家 金澤泰子
連載『きょうも、いい日』

「経済優先社会における翔子の役目」

ダウン症の書家として活躍し、また生活面でも独り立ちをはじめた娘、翔子さん。その成長の日々を、母金澤泰子氏が綴ります。
母娘の絆に、胸が熱くなります。

◎ かなざわ やすこ
書家。久が原書道教室主宰。
一人娘、翔子さんをダウン症児として授かり苦悩の日々を送るが、その苦しみを越えて、翔子さんを立派な書家として育て上げた。

 

◆茨城ダルク代表 岩井喜代仁
連載『今日一日を生きる』

「外国人を受け入れる施設 群馬ダルク」

薬物依存者が社会復帰を目指すリハビリ施設として、薬物依存回復の確立した方法論を持つダルク。
自ら薬物依存症の道を歩みながら、今は仲間の回復のために茨城ダルク代表を務め、各施設責任者を育てる岩井喜代仁さん。
仲間に励まされ、支えられ、許され、受け止められながら、施設長として独り立ちしていく姿は毎回感動です。
ともに苦しむ仲間の絆があるからこそ、人は前に進むことができるのだと教えてくれます。

◎ いわい きよひろ
薬物依存回復施設 茨城ダルク「今日一日ハウス」代表 女性シェルター代表
自身が薬物依存症となり、苦しみ抜いた末にダルクと出合う。以来、救う側へと生まれ変わり、薬物依存に苦しむ子供たちを預かり、共に生きて回復を目指す。

道210号 宇城憲治

 

◆UK実践塾代表  宇城憲治
連載『気づく気づかせる』

「人間に内在する真の力」

最先端のエレクトロニクス技術者として、さらには企業のトップとして活躍してきた宇城憲治氏は、現在徹底した文武両道の生き様と、武術を通して得た「気」によって、人間の潜在能力の開発とその指導に専念。
現在、氏は目に見えないものを目に見える形にするために、「普遍性、再現性、客観性」の実践検証をもって「目に見えないもの」の存在を解き明かす研究を先行させている。

◎ うしろ けんじ
㈱UK実践塾 代表取締役 エレクトロニクス分野の技術者、経営者として活躍すう一方で、武術の究極「気」の指導で人々に潜在能力を気づかせる活動を展開中。
創心館空手道 範士九段。全剣連居合道教士七段。宇城塾総本部道場 創心館館長

◆編集部コラム 『心の奥の取材ノート』

「現代舞踊家 石井みどり先生・折田克子先生のこと」

交わした言葉、ちょっとした仕草、振る舞い ――
今もありありと思い出す、取材で出会った人たちの思い出を綴ります。

  編集後記

紫舟さんには4年ほど前、宇城先生の講演会で初めてお会いし、細い体に何かふつふつとした熱いものを感じたのが印象的でした。今回、アトリエでの迫力満点のお作品と、その詳細解説とともに紫舟さんの制作への思いを伺い、また対談での言葉よりも内面でのやりとりのお話に、あらためて目に見えるもの以上に、目に見えない内に秘めたるエネルギーの存在、それがいかに人を感動させたり元気づけたりするものであるかを知り感動しました。

前号で取材した天外伺朗さんご出演の映画を手がけられた吉岡監督。思いがけず沖縄のイベントでお会いし、初対面なのに昔からの知り合いのように感じ、とても嬉しかったのを覚えています。会見では、監督の故郷や自然への想いが幼い頃からずっと消えずに高まっていき、それが映画制作につながっていること、そういう自分の中の切れない、消えない思いを温める大切さを教えられました。

「特急列車しゅっぱあーつ!!」あっという間に山を駆け降りて行く子供たち。「ごめん、もういっかい!」と何度もお願いして写真を撮らせてもらいました。こんな凄まじく元気あふれる子供たちを、日々見守っておられる近藤園長。立ち上げからご苦労があった14年間も、きっとこの子供たちの、この笑顔、この元気のためにあったのだなあと会見を伺いあらためて感じたのでした。

(木村郁子)

ドキュメンタリー映画の醍醐味は、登場人物の表情や動き、そこから見える心のあり方まで「その人のもの」であることだと感じていました。では、「その人」を映画に込める制作過程はどんなだろう?  吉岡敏朗監督のお話を聞いてビックリ!  撮影した全映像の1パーセントも使わない作品があるなんて。興味が湧いたら全部撮る。そこから何を残してどう伝えるかに、監督の魂が乗る。それがドキュメンタリーなのだと思いました。

「これを登っていくのか……」多度山に足を踏み入れてほどなく現われた木々の間を縫って上にのびる道を、子どもたちと近藤直樹園長はすいすいと行ってしまいます。道が曲がれば視界から消えてしまう彼らの姿を追って、やっと追いつくと、子どもたちは山の斜面の倒木を上って飛び降りて…を延々と繰り返し……。でも、「危ない」も「早く行こう」もなし。新鮮な空気の中、ふかふか腐葉土の上を這い、駆け回る子どもたち。幸せな子ども、幸せな家庭、幸せな社会。近藤園長のミッションは私たちの願いでもあります。

今号から、工藤清敏さんの連載が始まりました。私たちの心身を健やかに保つために必須のミネラルを、たっぷり含んだお塩。そこから見れば、身の回りで当たり前になっているものごとを見直す新たな視点が現われます。まずは、知ることから。

 (千葉由利枝)

購入する