合気会九段 岩田一空斎
 「対象を宇宙に置いた合気道を目指して 」

合気会本部道場の前身、皇武館道場(昭和6年)が設立される以前より植芝盛平に入門した岩田一空斎師範。
『開祖を語る直弟子たち 植芝盛平と合気道 第1巻』につづられた岩田師範のお話からは、戦前から修行され、戦中、戦後と激動の時代を開祖とともに生き抜いてきたからこその、合気道への、開祖への強い思いを感じます。
「禊とは、人間はだんだん垢や埃、癖が付いたりするので、それを洗うということです。
そうやって自然の生物本然の姿になることが、合気道の愛じゃないかな。
それをどこまでも伸ばしていくことが、開祖に忠実な弟子として大切なことだと思うのです。」

「人間は地球の癌になってはならない。
 地球の良き細胞にならなくてはならない」


 時代は移り変わっても、伝えていかなければならない変わらぬ開祖の思い。1985年に行なわれた会見から27年たった現代においても、師範の言葉は今にしっかり生きているのではないでしょうか。

「・・・欲望には膨脹性がある。だからこうなると争い、戦争だな。権力者が欲望を達成するためには犠牲が多い。泣く人が多い。命を失う人が多い。これは人類の歴史です。こいつを止めなければならない。原爆、水爆を使ったらもうおしまいです。これなんです、植芝先生が世界平和をいったのは。人々は納得するような話し合いをしなければならない。私はそう思います。力でやるのではない。物の道理を基準として世界を作っていかなければならないということです。」


 「いろいろな理屈をつけられるけれども、私たちは体験を通じて生きておるんだ。本で学んだことだけじゃない。人類は、お互いに兄弟です。母親は地球だもの、みな兄弟です。住む所と環境が違うだけ。環境が違うから言葉も違ってくる。習慣も違う。そこに誤解が生ずるけれども、本来はみな同じなのですね。年を取るに従って自分の欲に毒されたり、環境に毒されていろいろと不純不潔に汚染されているのです。
 それを清めるために禊があるのです。禊というのは水をかぶるだけではないのですよ。人間の姿はだんだん垢が付いたり埃が付いたり癖が付いたりするので、それを洗うということです。そうやって自然の生物本然の姿になることが、合気道の愛じゃないかな。私は先生の教えになるほどと敬服しました。それをどこまでも伸ばしていくことが、先生に忠実な弟子として大切なことだと思うのです。真似するだけではいけない。
 せっかくいただいた知恵なんだから、人間は地球の癌になってはいけないのです。いい細胞にならなければならない。こういう点を合気道を通じて、私は訴えていきたいのです。大先生も同じ気持ちであったと思います。植芝先生の気持ちは世界平和ということでしたからね。
 先生は88歳で、惜しまれて逝かれましたが、まだまだ道を追求しておられました。それを切り開いていくのが弟子の務めなのです。そうではありませんか。
 今は地球的に物事を考えなければならない時代なのです。合気道を通じて、もっともっと国際的に考え方を変えなければならない時代になってきていると思うのです。私は今回、国際合気道連盟の高等評議会議長になりました。ですから、本当に合気道を通じて、人種、国境を超越し、平和を模索していきたいと思っております。」