13 11月

季刊『道』連載 金澤泰子さん「あふれる真心と愛」より

現在『道』で連載していただいている、ダウン症の一人娘・翔子さんを書家に育てあげた金澤泰子さんの記事「あふれる真心と愛」からの言葉を紹介します。

一緒に死のうと思って彷徨(さまよ)っていた時期、
 翔子が小さな子犬を見て、頬を染めて微笑んだ。

 知能がないと告知されたにもかかわらず、
 翔子の体内で起きているこの「頬を染めて微笑む」という
 見事なメカニズムに、私は、これはもはや人間業ではなく、
 神の御業だと気づき、人間の神秘の重大さを感じて
 思いとどまり、深い絶望の淵から這い上がった。

 何があっても泣いたり騒いだり不満を言うことなく
 静かに微笑んでいる翔子の、
 この不思議な微笑に神の光を見ざるを得なかった。
 自分のことに涙を流すことはほとんどない。
 この世に不満のかけらも持たない。
 いつも他の人の悲しみや痛みに涙を流す。

 教えたわけではないのに顕(あらわ)れるこの不思議な感情は、
 あまりにも尊くて、私はこのことをどうしても語り継いで
 おかなければならないと思っている。

 とても大きなものを包括しているので、
 どこまでそれが伝えられるか分からないけれど、試みてみたい。

毎号、一人娘・翔子さんへのあふれる思いがつづられています。
全文は、最新号『道』174号でお読みください。

金澤泰子(かなざわ やすこ)
書家。
久が原書道教室主宰。